2010年5月25日火曜日

私が好きだったWillcom

現代社会では必須となった携帯電話。みなさんも持っていると思う。
ところでみなさんはどの携帯電話会社とどういう理由で契約しているだろうか。
私はつい最近Softbankと契約するまではWillcomをメインの回線として利用してきた。
どうしてまたPHSを使っていたかというと、他社へ乗り換えないだけのそれなりの理由があった。

・過去のWillcomの利点

PHSはサービス開始当初から安かろう悪かろうのイメージが強かったと思う。実際にサービスイン直後はひどかったとも聞く。しかし首都圏に住んでおり、旅行も大してしない私にしてみればPHSでも十分なサービスエリアだったし、私が初めてPHSを契約した当時ではアンテナを複数搭載した端末や、基地局の増加などでサービス開始当初よりは大きく改善していた。
結局将来性のことや、番号やメールアドレスが縛られることを深く考慮せずに、維持費の安さと通話品質の良さで当時PHS最大手であった旧DDI pocket(現Willcom)と契約した。
意外に思われるかもしれないが、当時のPHS端末には今では携帯に当たり前のように搭載されている機能・サービスが先駆けて導入されていた。
例えばiモードのメールの文字数制限が256文字だったころに、数千文字・画像添付可能なメールサービスをすでに提供していた。SMSやMMSも当時から充実し、同社間のメールは送受信無料サービスも行っていた。後には同社間のみならず、他社宛のメールも定額になるサービスも始まった。
携帯では単純な電子音の組み合わせだけだった着メロもPHSではMIDI音源を搭載したり、音楽配信サービスを行っていたりした。
GPSケータイが出現するよりずっと前から、位置情報サービスやそれを利用した案内なども利用できた。最近たまにテレビなどで紹介されるようになった「コロニーな生活」というゲームももともとはPHSの位置情報サービスを利用したものだったのだ。
もちろん携帯電話と比べると端末自体の性能は見劣りすることが多かったが、その分アイディアで勝負しようという意欲があふれていた。

しかしながらそれらのサービスが評価されることは少なかった。十分な宣伝が行われることもなく利用者が伸び悩んだり採算割れでサービスを終了したり、携帯各社がそのアイディアを取り入れることで埋没化していったりした。
しかしその中で、一時的にせよ加入者を増やすまでに至ったサービスもある。
データ通信定額サービス、音声定額サービス、フルブラウザ搭載端末などがそれにあたる。
これらのサービスは当時の携帯電話業界では革新的なことで、この時期には周囲にWillcom持ちの人もずいぶん増えた。

また、Willcomは大手携帯3社と比べるとしがらみが少なく、尖った端末が出ることが多かった。
業界初のフルブラウザ搭載端末であった京ぽんことAH-K3001V、日本のスマートホン普及のきっかけとなったW-ZERO3シリーズ、必要十分な機能とかわいらしいデザインのHONEY BEEシリーズなど、需要の隙間をうまく狙い成功した端末もあった。

・利点の喪失

しかしWillcomの好調期は長くは続かなかった。いくつかターニングポイントがあったと思うが、最初の、そして最大の転機はホワイトプランの登場だろう。ホワイトプランは条件付ながらもWillcomの音声定額サービスと類似したサービスを1/3程度という驚異的な値付けで登場した。この時にWillcomは対抗措置をとらなかった(とれなかった?)。そのため顧客を一気に奪われ、純増のペースは止まった。
さらにイーモバイルの登場で、値段は大きく変わらないまま高速通信が可能になり、データ通信分野でも顧客を奪われるようになった。
安かろう悪かろうどころか、安くないし悪いという状態になってしまったのだ。

端末でも、フルブラウザ搭載も当たり前になり、スマートホンも珍しくなくなった。特にiPhoneはSoftbankのキャンペーンもあり、爆発的にヒットした。

・SPの乱発と倒産へ

そのままジリ貧になりながら無策のまま時は過ぎていった。一利用者であった自分としては「そろそろ対抗策を出すだろう」と踏んでいたが、思わぬ形でそれは行われた。
Willcomがはじめた対抗策とはスペシャルプラン(以下SP)の開始である。SPとは端末代金込みで音声定額サービスやデータ定額サービスを月々980円などで利用できるプランだ。新規契約者に限られるが、複雑な料金設定に悩むこともなくわかりやすく安価に利用できるサービスといえる。しかしながら料金プランを直接改定したわけではなく、割引額の増加という形をとっていたため、既存顧客には恩恵がなかった。使い古した端末のまま3~4倍の料金を支払わなくてはならない既存契約者は当然面白くないが、WillcomはMNPに参加していなかったため番号を人質に取られたような状態で我慢する人も多かった。しかしそれ以上に解約する人も多くSPを乱発しても純減が止まらなくなっていった。。
契約者は減っていく上に、回線あたりの収入も減っているのでこのころにはどんどん財務状況は悪くなっていたと思われる。
そしてADR申請、倒産である。その後既存契約者引止め策としてか、音声定額プランをそれまでの半額で提供するようになった。

・当時私が考えていた改善策

ではWillcomはどうするべきだったのだろう。今になって考えたことをいっても後出しであり意味はないが、当時一利用者としてこうして欲しかったと思うことを書いてみる。
まずは料金プランの改定である。SPの乱発のような歪な料金体系を生み出すのではなく、シンプルにするべきだった。端末代は別として標準プラン980円、音声定額オプション+500円、データ定額オプション+980円というところだろうか。
さらに他社へのメールも定額であること、24時間通話定額であること、ホワイトプランは実質的には980円+315円であることなどもきちんと宣伝すればそれなりに対抗できたのではないだろうか。
また端末開発への投資ももっと選択と集中を行うべきだっただろう。Willcom D4というノートPCを売り出していたが、その代わりに一般のノートPC+データカードのセット販売をしても良かっただろう。スマートホンもiPod touch+どこでもWiFi(Pocket WiFiのWillcom版)のセット販売のほうが良かったかもしれない。
その一方で現行PHS規格の改良による速度増加などについては出来る範囲で開発を急ぐべきだったともいえる。すでに開発されていたにもかかわらずW-OAM type G対応のW-SIMの発売が遅れたのは実に残念であった。

・Willcomの今後

Willcomに将来はあるだろうか? 正直に言えば難しいだろう。Willcomが今後も継続していけるかは難問山積といえる。その中で光明といえそうな物をあげてみる。

ひとつはWillcom沖縄限定のサービスである「だれとでも定額」というサービスだ。これは1回10分までという限定つきながらも同社間だけではなく他社端末に対しても定額で通話できるという画期的なサービスだ。Willcom本体でも実現できるかはわからないが、魅力的に映る人も多いだろう。

もう少し長期的な展望に立った場合のことを考えてみよう。将来的には現行のPHS規格には伸び白はないといえるだろう。構内PHSやテレメトリングなどで局地的には利用され続けるかもしれないが、将来的には廃れていく運命にある。そのときにWillcomに独自にインフラを整備する余力はないだろうしするべきでもないだろう。そこで注目されるのがMVNOとSIMロックフリーの流れだ。MVNOは独自にインフラを持たず、他社の回線を借りてサービスを行える。またSIMロックフリーの流れが強くなれば、Willcom本体で直接端末開発にかかわる必要性は薄くなる。XGP(次世代PHS)やLTEをMVNOとして回線を借りSIMカードと基本的な機能の端末を販売する形態をとれば生き残っていけるかもしれない。

素人の勝手な妄想ではあるが、Willcomに愛着を持っていたものとして、その再生に期待したい。

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